コザクラインコ「しじみ」を落鳥させてしまった話

竹千代をお迎えする前、我が家に来てくれた「しじみ」というコザクラインコの雛がいました。残念ながら落鳥させてしまったため、一緒に過ごせた期間は約2週間という僅かな時間でしたが、私たちはしじみのことが今でも大好きです。今日はそんな、しじみの話を書きます。

鳥のいない生活に耐えられない人間たち

セキセイインコの青ちゃんがいなくなってしまったことで気がついたことは沢山ありますが、それらをまとめると「私たちはすっかり鳥のいない生活に耐えられない人間になっていた」ということになると思います。

例えば、「朝起きてカーテンを開け、青ちゃんのカゴに掛けたカバーを外し、『青ちゃん、おはよう』と声を掛け、餌と水を入れ替える」という朝のお決まりの行動が、「朝起きてカーテンを開ける。以上」という感じになってしまい、なんとも活気の無い1日から始まり、家の中が殺風景になっていくのを感じました。

「鳥を飼いたい」という気持ちは、青ちゃんがいなくなってから割とすぐに二人とも抱いていたと思います。しかし、まだ青ちゃんが見つかったわけでも無いのに「なんて自分は薄情なんだ」という、自分自身と世間に対する言い訳のようなものが葛藤となり、なかなか踏み出すことが出来ずにいました。それでも、SNSやYouTubeなどネット上で、他の人が飼っている鳥や動物たちの映像を見ているうちに、「どうしても飼いたい」という思いが強くなり、新しい一歩を踏み出すことにしました。

コザクラインコに決めた理由

コザクラインコを飼おうと思った一番の決め手は、生体の価格と情報量の多さでした。というのも、青ちゃんは体も丈夫で、与えた餌はなんでも食べてくれるし病気知らずなとてもお金のかからない子でした。また、セキセイインコ自体がリーズナブルなインコさんなので、お店によっては1000円以下で買えてしまうこともあると思います。以前から春じまも私も中型〜大型インコを飼いたいと思っていましたが、ネット上で確認する限り、生体価格や維持費がセキセイインコとは比べ物にならない程で、今の自分たちではインコにとって満足な生活を与えることが出来ないのではないかと判断し、中型以上のインコを飼うことは諦めることにしました。

そこで、候補に上がったのがコザクラインコでした。コザクラインコはラブバードと呼ばれるほど人に懐きやすく(憧れのニギコロができるかも!)、遺伝的にも丈夫な個体が多く、生体価格も大体1万円以内で手に入り、何より飼育数が多いので参考書やネットでの飼育情報が網羅されていることに安心感を覚えました。そして、「雛から育ててみたい」というかねてからの春じまの希望もあり、コザクラインコの雛を販売している都内の鳥専門店へ向かうことにしました。

雛を育てるということ

私たちは、その昔ながらの鳥専門店で目にしたコザクラインコの雛に一目惚れしてしまいました。緑色の小さな体に大きな黒い瞳。その日から雛中心の生活が始まりました。

「しじみ」と名付けた生後2週間程度の小さな雛には、一日4回の挿し餌と保温が必要です。3口目くらいまでは勢いよく挿し餌を食べてくれるのですが、それ以降は毎回「ピィー!ピィー!」と絶叫に近い声を上げながら走り回り、人間の肘とお腹の間の隙間に顔を埋めてしまうのです。挿し餌はふやかした粟玉とexactというパウダーを混ぜたものをあげていましたが、温度が熱すぎるのか? はたまた冷たすぎるのか? もう、こちらまでパニックになってしまいそうでした。私は小学生の頃に何羽かのセキセイインコの雛を育て上げましたが、こんなに難しいものかと、少し途方に暮れてしまいました。

それでもしじみは日に日に成長し、「プラケースが狭い!」、「飛びたい!」と、どんどん主張が強くなっていきました。コザクラインコのメスは、とてつもなく気が強いと聞いてはいましたが、こんなに小さい頃から片鱗が現れるものなのかと、驚くばかりでした。そしてしばらくすると、仕事中に春じまさんから「しじみが、飛んだ」と連絡がありました。なんだか、母鳥の気持ちが分かるようでした。

健康診断に連れて行く

それから数日後、青ちゃんを診てもらったことのある鳥専門の動物病院に健康診断に連れて行くことにしました。そこで、そのう検査や腸内検査などを含めた健康診断をしてもらったところ、足の変形が気になるものの、体調は概ね良好とのことでした。少し便が緩そうなので、餌に整腸剤を混ぜるようにと薬をもらい、挿し餌のアドバイスをもらって帰路に着きました。

それから2日後の朝、しじみは急に苦しそうに羽をバタバタと広げ、口をパクパクとさせていました。これは只事ではないと、私たちは急いで鳥を診てくれる救急病院を探しました。しかし、朝10時前ということもあり、電話が繋がる病院自体が少なく、繋がったとしても「インコは診療外です」という電話口の返答が続きました。そうしているうちにも、しじみはどんどん弱っていっているようでした。泣きそうになりながら掛けた次の病院でようやく診てもらえることになり、急いでタクシーで向かおうとしました。

その時、クッと体を強張らせながら、右の翼を広げたしじみは、私の左手の中で息を引き取りました。まだ蘇生できるかもしれないと思い、嘴から必死に呼吸を送り込みましたが、しじみがもう一度動くことはありませんでした。

その日は呆然としながら仕事に行き、帰宅後に春じまさんと一緒に、以前飼っていたハムスターの「おもち」が眠っている公園の桜の木の下に、しじみを眠らせました。この時私は、やはり迷子になってしまうよりも、死を看取る方が辛いものだと実感しました。

インコの雛を飼う時に気をつけたいこと

  • 足の形、目の輝き、羽のツヤ、お尻の汚れ等をよく確かめる
  • 雛の育て方をきちんと説明してくれる所から購入する
  • 容態が急変した時の為に酸素ボンベを用意する(薬局等で売っている人間用のもので良いそうです)
  • 挿し餌は購入した所であげていたものを与える
  • 生後6週目くらいまでは保温が出来るプラケースで育てる
  • 体重を毎日計る

しじみが居なくなった後も、しじみは短い一生を少しでも楽しく生きられたのだろうかと、ふと考えてしまうことがあります。またいつか、しじみに会いたいです。

せめて、これから初めて雛を飼う方にとって、私たちの経験が少しでも役に立てばいいなと思います。

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